粉飾決算をした場合、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪に問われますが、私らのように企業内部の情報に疎い株の素人は、その企業の有価証券報告書が唯一の頼りですから、粉飾はほんとうに困ります。したがって今週は、先週の「脱税の財務分析」に続き「粉飾の財務分析」ついて報告します。なお、粉飾も脱税と同じく当事者にとって「心おだやかならぬもの」があると思います。泥棒だって「気とがめ」があり、顔を隠して泥棒稼業をします。まして経理・会計担当者は、企業の事業活動のすべてを１円の狂いもなく数値で表現するという使命がありますから、一点の曇りもない青空を仰ぐような晴れ晴れとした気持がなければ、必ず以下述べるようなボロが出てしまうと思います。
粉飾も「左右対称の原理」でバレてしまう
財務会計の根本原理は「左右対称」です。つまり、「売上」があれば、その反対側に「現金」「預金」の入金、あるいは「売掛金」が立つ。「仕入」「経費」という費用が発生すれば、必ずその反対側に「現金」「預金」の出金、あるいは「買掛金」が立ちます。「左右対称」の原理は、損益計算書[１年間の売上(収益)や仕入・経費(費用)を示す]、貸借対照表[決算日時点の資産と負債と資本金を示す]を合体すれば、左右対称の四角四面で表現されます。
粉飾の例「架空の売上を計上する」
粉飾の一つの例として「架空の売上を計上すること」がありますが、下図のとおり架空の売上を計上するだけでは、会計・経理の原理である左右対称、つまり、四角四面となりません。
架空売上に対応する資産の計上(または負債の除外)が必要
「左右対称(四角四面)」にするためには、「架空の売上金額」と同金額の「架空の資産を計上する」か「負債を除外する」必要があります。下図は「架空の売上金額に見合う売掛金という資産を架空計上」した場合と、「架空の売上金額に見合う負債を除外」した場合です。
粉飾は、資産や負債に痕跡として残ってしまう
以上、企業の財務では、左右対称の原理(四角四面の原理)から、粉飾をしていても貸借対照表に表現されている資産・負債に痕跡が残ってしまいます。したがって、このブログで出しているグラフの動きは、会社が各期末に保有するキャッシュを、その獲得した４つの手段である「事業の儲けで獲得したお金」「運転資金で獲得したお金」「設備・投資等の長期資金で獲得したお金」「お付き合いで獲得したお金」で区分して作成していますから、貸借対照表に表現されている資産・負債に粉飾の痕跡が残っている状況を拾い上げています。つまり、毎期どのようにグラフが変化しているかで明らかにしています。
架空の売上、架空の売掛金 ➡ 緑色グラフが急落
真正な有価証券報告書【青色のグラフの事業の儲けのお金はマイナスです】
架空売上に見合う売掛金という資産を計上した。または架空売上に見合う金額の「買掛金」という負債を除外したため「運転資金でのお金」のグラフが急落しました。(架空売上で水色のグラフは急増してます)
費用を過小計上、子会社長期借入を減額 ➡茶色のグラフが急落
真正な有価証券報告書【青色のグラフの事業の儲けのお金はマイナスです】
費用(仕入、人件費、または外注費)の過少計上に見合う「長期借入金」という負債を減額し、または「長期貸付金」という資産を増加させたため「設備・投資等」が急落しました。(費用の除外で利益が増加し水色のグラフは急増してます)
架空の雑収入等、架空の子会社貸付金 ➡ 紫色グラフが急落
真正な有価証券報告書【青色のグラフの事業の儲けのお金はマイナスです】
架空の営業外収益(雑収入など)に見合う「子会社貸付金」という資産を計上したため「お付き合いでのお金」が急落しました。(架空の営業外収益で水色のグラフは急増してます)
美しい服を着ても、体形は変えられない
以上粉飾は、脱税と同じで貸借対照表に表現されている資産・負債に痕跡が残ってますから、会社が毎年の決算期末に保有する現金・預金(キャッシュ)を、その獲得した４つの手段である「事業の儲けで獲得したお金」「運転資金で獲得したお金」「設備・投資等の長期資金で獲得したお金」「お付き合いで獲得したお金」で区分して発見できると思います。なぜなら、財務上の勘定科目は最終的には現金・預金(キャッシュ)に行き着くことから、下図のように「金」の流れを時系列的にみれば、必ずどこか不自然な動きを知ることができると思います。
【お金の流れは「右から左へ」「下へ」そして「左から右へ」での逆時計回りです。具体的に説明しますと、①借金(負債)して、預金(資産)した。②商品(資産)を買って代金(費用)を支払った。③販売で利益をつけて売れた。(収益) ④売上代金を預金した。】
「事業の儲けでのお金」「運転資金でのお金」「設備・投資等でのお金」「お付き合いでのお金」については、下記のユーチューブで簡単な説明動画が見れます。ご参考にしていただければ幸いです。